ニューヨークが生み出したダンススタジオの殿堂 “Steps（ステップス）”。ここはパフォーミングアーツに欠かせない様々なダンスレッスンを提供するオープンクラススタジオです。ブロードウェイミュージカルの出演者や超名門バレエ団に所属するトップクラスのダンサーをはじめとするニューヨークのパフォーマー達が数多く通うこのスタジオで、中でもレジェンドと呼ばれるナンシー先生（Nancy Bielski/以下、敬略）のバレエクラスを訪問しました。
ディアナ・ヴィシニョーワやアレッサンドラ・フェリなども通う事がある彼女のクラスはステップスの中でも指折りの人気。今日も一般の受講生に混じり、超有名バレエ団のプリンシパルダンサーがレッスンを受けていました。目が醒めるようなクールな音楽を奏でているのはバレエピアニストのティモシー。彼もまた、ABT（アメリカン・バレエ・シアター）やNYCB（ニューヨーク・シティ・バレエ団）などでレッスン演奏を受け持つ一流のバレエピアニストです。どこかジャズ風に聴こえる演奏の中に、時折「ルパン三世」や「ジブリ」の音楽を入れてくる大の日本好きでもあります。

クラス開始と共にスタジオの空気は一変。巨大なスタジオで40~50人の生徒がいっせいに自分の身体と向き合い、ナンシーのアンシェヌマンをこなします。どんどんと上昇するスタジオの温度。大人数のダンサー達が集中する空間とそこに流れるピアノのメロディー。それはまるで、清らかで美しいダンサー達の儀式を見ているかのように感じます。

 

プロとアマチュアが共にレッスンを行うオープンスタジオですが、ナンシーのクラスは一味違います。レッスンについていけない受講生がいる場合、彼女は容赦無く「後ろに下がりなさい」と一喝。それは15年以上稽古を続けるセミプロフェッショナルのダンサーでも例外ではありません。高い技術力を要するハイレベルなクラスにおいて、誰もが緊張感を持って挑んでいます。まるでナンシーに認められること、そして、このクラスをこなせる事が一つの価値基準になっているように思えるほどです。

普段は生徒のプライバシー保護の為、一切の撮影が許されていないこのスタジオにおいて、赤い靴が取材を出来たのは、4名の地元ダンサーの協力が得られた為でした。1人はトワイラ・サープ・ダンス、シンシナティ・バレエ団などで活躍する現役ダンサーであり、1人はニューヨークの有名スタジオにてクラスを受け持つ教師であり、1人はこのステップスにて18年前からクラスを受け持つ日本人教師、そして最後の1人はこの取材の1番の立役者であるフリーランスの日本人ダンサーです。誰もがバレエを中心とした生活の中、自身の身体を作る為、ステップスに通っています。
 

真剣勝負のダンサーが通うオープンクラススタジオ。それが、ここニューヨークにおいて、ステップスがトップクラスのスタジオであり続ける大きな所以なのでしょう。